塩の江戸ゲ戦記

ソラノキオクを求めて

塩サイダー(@ShioCider_RUKIT)のエロゲ感想日記

エロゲは実質トマトケチャップというお話

こちらのブログを動かすのは凡そ1年ぶりだろうか。
先日人と通話した際にエロゲ業界が衰退に向かっているという話を転がして、ある程度の結論に落ち着いたのだけれど、もう少し深掘りしてみたくなったので久々に文字を打ってみることにした。

仕事中空いた時間を使って諸々考えてみたところ4つほど大きな要因があるのかなと感じたので、それぞれ書き綴っていこうと思いますです。

 

スマホ所持率の増加に反比例してのPCの所持率の低下

総務省のサイトを見てみると、2019年時点で既にスマホ普及率:90%、PC普及率:69%という数字が出ている。よって3年経った現在では更にスマホは上昇、PCは下降しているのが予想できる。
この傾向はほんと顕著で、僕はWebを生業とした職に就いてるので、稀に運用サイトのアナリティクスを眺める(サイトにアクセスした人の情報を調査する)機会があるんだけど、まあその殆どスマホなわけですよ。
サイトによってばらつきはあれど、大体の場合スマホタブレットを統合すれば75%前後となるので、未だにPCでネットサーフィンしてる人種は実は結構希少種。
で、エロゲは多くの場合そのPCを使用しなければプレイすることができないため、PCの普及率に比例して人口も少なくなっているのが現状。

尤も、PCを使用しなければ成り立たない業職種は多く存在するから、PCに代替されるような機械製品がリリースされない限りはこの数字が一定値を下回ることはないんじゃないかなとも思うけどね。
とはいえ、この傾向は今後も続くし、スマホとPCの差は広がっていく一方なのは間違いよねと。

 

最近のノベルゲームはスマホ版もリリースされる傾向にあるけど、全体でみればやっぱり数は多くはないし、③にて後述する理由により爆発的な売り上げには繋がってはいない状況だったりする。
また、スマホ版を発売する最大の理由はこのスマホ、PCのシェア率から来るものなんだけど、TwitterのTLを眺めていると「外でエロゲなんてやらんでしょ」といった意見がとらほら見受けられた。つまり既存プレイヤーはこの背景よりも『出先でプレイすること』に意識が持っていかれているように感じる。
既存プレイヤーはPCを所持しているから、スマホ版を買うメリットは多くないので当然といえば当然だけど、こういった企業間とユーザー間での認識のずれも売り上げに繋がりきらない要素の一つなのかなと思考の片隅に引っかかっております。(スマホ版のターゲット層はPCを所持していない新規客であるため、そこまで気にするような要素でもないとは思うけどね。)

 

②プレイヤーの少子高齢化、及び高年齢層の引退

現状エロゲ業界は前述するPCの普及率の低下に伴い、新規層が入って来にくい構造が出来上がりつつある。
こうなると業界を支えるメイン層は既存のプレイヤー、所謂古参と呼ばれる方々になってくるわけだけども、残念ながらこちらも年々数を減らしてるんよね。

ここでエロゲ業界のターゲット層について考えてみよう。

エロゲは名の通り18歳以上を対象として市場に網を張っているので、下限は18歳。対して上限だけど、(これはあくまで僕の個人的な見解であり、統計上の数字等の用意はないのだが、)恐らく30歳前後がせいぜいかなと思ってる。
仕事であれば役職に就いたり、結婚し家庭を築いたのであればそちらに時間を割く必要が出てきたり、あとは純粋に飽きだよね。そういった要素が積み重なり大方三十路付近で落ち着く趣味なのかなと…。

この仮定で話を進めるとメインの対象層は18~30歳前後の男性となるわけで、かなりニッチな市場といえるよね。

 

少し話は逸れるんだけど、エロゲ業界の市場規模がどのくらいか皆さんは把握してらっしゃいますでしょうか。

(出典:株式会社矢野経済研究所・「オタク」市場に関する調査を実施(2016 年))

少々古めのデータだけども、エロゲ業界は凡そ185億円と言われてる。じゃあ185億という数字が多いか少ないかという話なのだが、まあ少ない…。
例えばソースの市場規模が約188億円(※)である。


ソースってあのソース?

 

そうです。中濃ソースやとんかつソースでお馴染みのあのソースです。
しかも負けています(笑)
他だとトマトケチャップは約177億円(※)と言われていて、一応こちらと比較すればギリ勝ちしてはいるけど、今年のデータ(※2)で比較すれば普通に負けているので、実質ドローですね。

 

つまりエロゲ≒トマトケチャップなのです。

 

ここまで聞いてピンと来ない方のために更に他の例を挙げますと、
家庭用ゲーム機;約4,070億円
ポケモン:約1,067億円
です。
もう話になりませんね。
簡単な話

ピカチュウが10万ボルトを撃てば、エロゲ業界5回滅ぼせます。

凄いですね、ポケモン


話を戻すと、上記のようにただでさえ狭い市場に新規客は入って来ず、既存客も抜けている状況なので、市場規模はますます縮小していかざるを得ないというお話。

では何故既存客は離れていくのか。
勿論先ほど挙げたような理由も多くの割合を占めるかと思われるけど、他にもやはり大きな要因がある。

それが次項。

 

※ 出典:市場規模マップ | visualizing.info

※2 2021年時点で195億円(出典:カゴメ 2021年6月期 決算資料)

 

③他コンテンツの増加

これが非常に大きい。ほんとに。
現代はスマホ一つあればいくらでも暇つぶしができる。

  • ソシャゲ
  • 動画視聴
  • 漫画アプリ
  • SNS

中でも特にこれらが非常に大きな比重を占めており、エロゲ業界のターゲット層ほどこれらのコンテンツに傾倒する割合も高めだと思われる。
加えてエロゲは全体のプレイ時間そのものが長くなりがちなのに加え、一度のプレイの際にもそれなりにまとまった時間が必要。
対して上記のコンテンツは、空き時間があれば簡単に開き、楽しめてしまう都合上手軽さではこれらにまるで歯が立たない…。

 

①でエロゲのスマホ版のリリースについての話を転がしたけども、スマホで娯楽を楽しむユーザーの特性として『ストレスなく手軽に楽しめるコンテンツを求める』、というものがあるため、そもそもターゲットユーザーに対してエロゲはあまり相性が良くなかったりする。

 

さらに追い打ちでこれらの強力な点がもう一つある。
それは手軽に始められ手軽に終われるが、『敢えて終わらない』という選択肢をとることも非常に容易であるという点。
---------------
ソシャゲ:
ログインボーナスやデイリー周回後、キャラの育成や他ミッションを進める

動画視聴:
見たい動画を見終えた後、関連動画を回り他動画も次々視聴していく

漫画アプリ:
動画同様目当て物を読み終えた後他作品に目を向ける

SNS
TLでイラストを漁ったり、リプライを返す際その返事を考える等
---------------
このようにいくらでも追加で時間を割くことが可能。
どれにせよ自社コンテンツからの離脱率を下げるための施策を行っているのである。
やー誘惑が上手いねほんと…。

どんな人間でも時間だけは平等に24時間持っている。
ただ逆に言えば24時間しかないわけで、その中でさらに限られた空き時間に該当する部分を各種エンターテインメント系の企業や、あるいはYouTuberであれば個人が奪い合っているわけですよ。
そのような中で小回りの利きづらいエロゲが競争に参戦しても、当然これら強力なコンテンツに追いやられ、フェードアウトへ向かってしまうという結果は見えている。


そのため既存客もエロゲから離れていってしまうわけですな。

 

④競合他社との競争力の低下

上記3種の流れにより市場の規模は年々縮小し、エロゲ業界の各企業も資金の調達が難しくなるため、一作あたりの質も低下傾向にある。
事実直近1~2年で『これはエロゲ業界でも屈指の名作だ!』と言われるような作品は出ていないのではないかなと思ったり思わなかったり。
寧ろ体験版の範囲、あるいは中盤前後までは面白くても終盤に失速するという作品が多い印象を受けており、予算不足が響いているのかなと若干心配。
こういった作例が続くと、ベンチマークの基準が下がり、企業間での競争力も低下し、俗に言う面白いとされる作品の数も少なくなっていってしまうと思う。
要は「あの会社のレベルがこれなんだからうちのこっちなら全然マシでしょ」といった流れになってしまうのではないかと危惧してる。(メーカーの方々には大変失礼な話で恐縮ですが…。)
ユーザー視点でも初動は様子見し、評判が良さそうであれば購入を検討するといったユーザーが増えていくだろうし、体験版の範囲までを面白くしても丸裸にされ、売り上げに繋がらない結果になってしまうからね。

 

昨今では某批評空間に限らずTwitterでも評判を聞くことはできるため、情報収集は容易だし、このTwitterに割く時間』というのが③でも触れたエロゲをプレイする時間を他に充ててることにも繋がっているので更に厳しくなる一方。

 

業界全体がこの負のスパイラルから抜け出せない以上、これから先再び市場規模が膨れ上がる未来が訪れることはないのでしょう。

 

おわりに

考えれば考えるほど厳しい…。
僕のような半端者ではこの辺りの考えがせいぜいだけども、業界人の方からしたら更に何か伸び悩む要因が思い当ったりするのかもしれんね。

 

あくまでもノベルゲームという媒体を維持して勝負するのであれば、個人的にはPCの普及率低下を考慮しスマホ版、あるいはswitch、ps4版のリリースは必須かなと思う。
PCでの新規層の獲得が難しいのであれば、多少相性が悪かろうとこちらを開拓するしかないし、一応広告を打てる機会も設けられ、ユーザーの接触回数を増やすこともできるだろうからね。


よくTwitterでも何故全年齢版に拘るのだろうといった意見を目にするけど、そうしたいからではなく、そうせざるを得ないところまで追い込まれてるからなのでしょうね。
また、必須ではないけど、離脱率を下げる目的で『短く高品質なシナリオ』に仕上げるというのも戦略の一つかなとも思う。

で、これらの要素を兼ね備えた作品が実は既にあって、

それがkeyの『LOOPERS』

大きなヒット作になったわけではないのだけども、必要な要素を兼ね備えた優れた作品なのではないだろうか。
案外こういった思考から逆算して作られた作品なのかもしれないね。

 

じゃあLOOPERSやATRIのような作品を出し続ければいいのかというとそこもまた難しい。
既存客にはある程度のボリュームで重厚なるストーリーを求めている層も一定数存在する。
ちなみに僕もその一人だったりする。


仮に短編作品がエロゲ市場に溢れた場合、僕のような捻くれた人間は「(今のも好きだけど)昔の方が良かったな」と老害のテンプレートみたいな発言をしてしまう気がしないでもない。
ただボリュームのあるシナリオゲーを出したとしてもこれまで再三書いてきた通り新規は買わず、既存の客は次第に抜け、一部の物好きしか買わないので、この辺りの塩梅の調整が本当に難しいだろうなと思う…。

 

エロゲ業界がオワコンで今すぐに終焉を迎えるのかと言われればNO。
あくまで回復の兆しも見えない中5年10年とゆっくりと時間をかけて衰退していくといったお話。
例えとしてはあまり良くないけど、完治しない病気が身体を蝕み続けるのを見ている、あるいは薬で進行を遅らせるしかできないようなものかなと。

僕はノベルゲームが好きな人種なので出来るだけ長く目を向けていたいところだけど、街のゲーム屋さんやレンタルビデオ店オンラインストアに淘汰されたようにこれもひとえに時代の流れなのでしょう。


企業様各位には何とか粘ってほしいものです。