FATAL TWELVE 評価 / 感想
FATAL TWELVEとは
あいうえおカンパニー発の全年齢対象サスペンスビジュアルノベル。
全く同じ時間に亡くなった12人による生き残りを賭けた女神の選定という名の戦い。
戦いと言っても殴る蹴るの様な肉弾戦や異能力バトルものではなく相手の<氏名>, <死因>, <未練>といった情報を集めること。
カードを集めた後指名を行うことで相手は脱落、事実上の死を迎えます。
最後の一人になったら本来死へ向かうはずだった運命が変わり、その参加者のみ生きながらえることができるというものですね。
結構ルールが複雑なため、公式によるルール説明の動画があるのでそちらを見るとより分かりやすいと思います。
基本は主人公である獅子舞凛火を軸として話が展開されていくんですが、所謂群像劇で、他のキャラでの視点で話が進む箇所が複数あり、より参加者同士でしている腹の探り合いが密に描かれていますね。アニメでいうところのデュラララやバッカーノみたいな進み方が好きな方には合うと思います。
ロープライスなゲームなので比較的手を出しやすいかと思います。価格のわりに主人公含めフルボイスで、CGの数もそこそこあるので情景変化をより楽しめましたね。
あなたには誰かを犠牲にして生きる覚悟がありますか?
※これより先は感想となります。
各キャラ感想→非ネタバレ
シナリオ感想→ネタバレ
といった具合で分けて書いていきますので、未プレイで雰囲気が知りたい方は各キャラ感想まで閲覧する形にしていただけると良きだと思います。
ただある程度キャラの良さを書くために多少ゲーム内での動きについても触れておりますのでご了承ください。
各キャラ感想(ネタバレ無し)
獅子舞 凛火(No. I)
お人好し主人公。金色の髪は趣味ではなく地毛。
目つきの悪さと髪の毛のせいで不良だと思われており友人は少ない模様。
最初は「なんでこいつ主人公なんだ...魅力薄くないか?」という印象でした。
物語序盤は積極的に動かず、動きを見せたかと思えば他の参加者を脱落させる覚悟なんて全くなくすぐ周りに流されるといった有様。ある意味主人公にありがちなパターンとは言えますけどね。
その割に芯が一本通ってる子で、選定が進むにつれて自らの意志をもって、業を背負う覚悟をしていくという姿は紛れもなく主人公でしたね。
身内の危機でスイッチが入るタイプ良きだ。
実家が喫茶店でそこのスタッフということもありこんな具合にコーヒーにも精通しています。
僕自身も似たような店で働いてるということもあり多少親近感がわきましたね。
(因みにその丸い緑のコーヒー屋でもグアテマラという豆は取り扱っていて、酸味やコクともにバランスの取れた万人受けするコーヒーとして親しまれています。)
未島 海晴(No. II)
凛火を恋愛的な意味で好いている容姿端麗僕っ子。
非常に優秀で人の言葉の裏であったり仕草を読み取るのが得意な為、見ている側としては安心感がありましたね。ただ心の奥に脆い面がありそこを突かれると一気に崩れてしまうあたりは思春期の女の子って感じがして良きでした。
裕福な家庭ではないため秋葉原でメイドさんとして働いているみたいです。やっぱ自給いいんでしょうね。
僕は以前ポケ勢仲間と興味本位で秋葉原のメイド喫茶に行ったことがあるので、この海晴のセリフは胸をナイフで刺されたかのような感覚になりましたね。
なお本人曰くこの仕事自体には執着はなくすぐにでも辞めたい模様。
僕自身はそんなに百合が好きなオタクというわけではないですが、理解がないわけではないし、惚れる理由にも納得といったところなので選定と同時に自分の恋も進めていくという過程は見ていて面白かったですね。
フェデリーコ・カルミナーティ(No. III)
割とイケメンだし頭は切れるけどヘタレ。全キャラの中で1番好きかもしれないです。
序盤から出てきてオデット(No. XI)と組んで選定に参加していくんですけどこの2人の関係がまた良いんですよね。
残れるのが1人である以上間違いなく利害一致の元成り立ってはいた関係ではあったんですけどそこに情が入り込んでいくのも人間だなって感じがありました。
ほんとこいつは人間くさいというか結構共感できる人多いと思うんですけど既プレイの方どうでしょうか。
オレは主人公じゃなくていい。
だが、この人生は勝利で飾りたい。
終盤のこいつは中々格好良かった。
ほんと良いキャラしてる。
(blank)(No. IV)
blankというのは名前が判明していない状態でこの子は記憶喪失なんですね。
記憶喪失でこんなゲームに参加させられてるってハンデ大きい気もするけどメリットもあるし割と面白いポジションの子なんですよね。
記憶を取り戻す前と取り戻した後でスタイルが変化するのも記憶喪失の醍醐味だなって感じで見てました。
凛火と一緒に初めて料理した後の喜び様が無邪気で可愛らしかったので、環境次第では全然違う人生だったんやろなあ...。
牛塚 茂継(No. V)
見た目から見た第一印象は寡黙な頑固爺で感じでしたけど実際は偏屈な老人。
対して知りもしないのに知った風なことを上から目線で言ってくるので鬱陶しい人ではあるけど人助けをすることもあるため別に悪人というわけではないって人ですね。
面倒臭いなって印象ではあったけど進めていくうちにちゃんとそうなる過程があって本人にも自覚があってってのが分かってくるのでまた見方も変わってきましたね。
まあなんにせよ大切なものはそう簡単に手放したらいけませんよね。いくら後悔しても変わらないんですから。
チャン・チャン(No. VI)
何にも感想はないです、申し訳ない。見た目は好きです。
魯 昌鎬(No. VII)
ちょっちメタボな中国人。
選定が始まっても割と普通に仕事してプライベートを送っていた人。実際いきなり女神の選定とか言われても夢の話で片づけてしまう人ってのはいてもおかしくはないしこういう人がいてもよかったのかなとは思ってます。
というか寧ろ割と普通の反応と言っても良いですよね。
この人は見た目の印象より優しい人だったのかもしれない、そう思えるようなお話でしたね。
瓶淵 桂子(No. VIII)
やたら早口やなあ...って印象だったママさん。第一印象怖かったですはい。
子どもの為に生きる覚悟を持ってる人ってのは凄いなと改めて思えるそんな強さを持ってる人でしたね。危機的状況でもアランの心情を読み取れるあたりなかなか良い観察眼を持ってるなと感じました。
スケール・ジョーンズ(No. IX)
病的なまでに正義を主張する人。
慎重かつ大胆、明暗がくっきり分かれる男という印象でした。
選定参加者の中でもトップクラスの情報収集力を持っており、その上口も達者なのでより胡散臭さが増して見えるんですよね。
この正義ってのが本当にタチの悪い話で
まさにこの漫画の通りなんですよね。だからこそブレないし人間らしさ満点の人でした。
恐らく人生を自分の思い通りに動かすことで初めて安心できるタイプの人なんでしょうね。
ただこいつが悪人かって言われるとそうとも言い切れない部分もあると言いますか、やってること自体は(あくまでも女神の選定の内部に限った話ではありますが)正攻法なんですよね。寧ろこの手のゲームを有利に進めるには王道的なルートだと思いました。
ソフィア・プリズニェツィ・アレクセーエヴナ(No. X)
名前長いので通称ソーニャ。
可愛い。完全に癒し枠。日本語がある程度話せるけど語尾が「であります。」といったどこぞのカエルの軍曹を彷彿とさせる喋り方がまた可愛い。
おでこを出しているのは隠し事をしていない印象を与えるためって設定資料集に書かれていてなるほどという感じでした。
しかもめっちゃ食べる。いっぱい食べる君が好きってやつだ。僕はほんと遠慮せずバクバク食べる女の子すこなのでこういう子は可愛く見えてしゃーないんすわな┐(´ー`)┌
しかもこの子まだ若いのに頭が良いんですよね。自分の状況を客観的に見れると。だからこそ凛火や海晴に願いを聞いてもらおうとしたわけですね。
や、妹にしたいですはい。
オデット・マランソン(No. XI)
一目見て「あっこいつやべえやつだ...。」ってのが分かるゴリラ女。
豪胆な性格で殴り合いを好むが、見た目に反して協力者のフェデリーコ(No. III)以上に頭の回転が速いんですよね。
つまりこの人は肉弾戦, 頭脳戦共に強いんですけどその強く見える理由ってのが何といっても余裕な態度なんですね。決してオデット自身は安全な位置にいるわけでもなく寧ろ危ない橋を渡っている側なのに飄々とこなしてしまうあたり、ついていきたくなるのも納得って感じでした。見てくれはともかく実際にこういう人がいたら良い上司になってくれるんだろうなって思いましたね。
やっぱりこういう選定を含めた自分の人生を丸々全て楽しんで進める人ってのは魅力的に映るもんです。良いカリスマ性持ってます。
かっけえっすわ、姉さん。
アラン・スコーピオン(No. XII)
怖いです、殺戮追跡マシンみたいな人です。
インド人で見た目通り屈強な男で物理的な闘いも得意としている他の参加者全員から危険視されている人。
20代後半に見えるような見た目してますけど実は19歳。僕より年下とは恐れ入った...。
会社の社長様でもあり、一代でインド国内でトップクラスのシェアを誇る企業にまで成長させたことから当然の如く頭が良いし人の仕草を見逃さない。
相対してるだけでどんどん情報が漏れていくのは恐怖ですよね。
序盤のこいつはほんと「血も涙もねえ奴だな...。」って思ってたんですけどあることをきっかけに選定に挑む姿勢が変わっていくんですね。
こいつも良いキャラしてるので色々語りたいところですけどネタバレにならないようにしていくとあまり書けないジレンマ。
以上がキャラ紹介および感想でした。ここから下はネタバレ前提で感想を綴っていきますので未プレイの方はご注意ください。
シナリオ感想(ネタバレ有り)
絶賛するほどではないにしてもなかなか楽しめる作品でした。
もう少し価格が高かったら違った評価になっていた可能性はありますが、ロープライスでこの完成度はなかなかのものだと思います。
起承転結が綺麗にまとまっていて序盤から散りばめられていた伏線が中盤から終盤にかけて繋がっていくのはこの手のシナリオの醍醐味ですよね。
強いて言いたいことがあるとすれば展開を予想しやすかったことでしょうか。
序盤から中盤にかけて
- 女神の選定自体は複数回行われていること
- パルカ(ダイアナ)を指名できること
- 記憶の中の男性がレテであること
辺りは想定していたのでそこまで驚きのようなものは感じなかったです。最初はパルカが前回の選定の優勝者で今回ゲームマスターの様な立ち位置を務めているという予想もしていましたがそちらは外れてしまいましたね。
僕はこの手のシナリオ重視のゲームだと如何にしてプレイヤーの予想を超えてくるかが肝だと思っているので、我儘を言うのであればもう少しあともうワンパンチはじけた感じに仕上げてくれればより素敵でしたね。
ついでに言うならせっかく12人の物語なので√次第で全然違う進み方をしてくれても面白かったなと思っています。どうにも序盤で脱落してしまう参加者に対して感情移入し辛くなりますからね。ですが、¥2,500という低価格のゲームである以上そこは上記の我儘以上に求めすぎというものですね。
話全体を通して多くのキャラが成長していく姿は見ている側としても胸に来るものがありますよね。
凛火や海晴は勿論フェデリーコやアランも序盤と終盤を比べても大きく変化していきました。
特にフェデリーコが良かったですね。フェデリーコがオデットを脱落させるシーンはこのゲームの中で一番好きなところです。
「やっとあいつを越えられた!」
そう思ったのに本質的に負けていたのはフェデリーコの方だった。
防御できる札をそろえていてなお脱落を選ぶオデット。
更に死に際オデットはフェデリーコをかばっていたという事実。
それ故フェデリーコは今後オデットを越える機会永劫を失ってしまったという皮肉。
でもこれがあったからこそこの男はより強くなるんですよね。
こういうヒューマンドラマほんとすこです。
BAD√とはいえフェデリーコが勝者となる未来があったのは肩入れして見ていた身としては感慨深かったです。
凛火 - 海晴の関係の持って行き方も結構好きでした。
海晴の性格上選定終了前に
答えを出す→どちらにしても脱落
答えを出さない→二人で生き残る
ってのには納得だったし綺麗な進め方だなと思っていました。
パルカに身体を奪われた後もスターダスト・キングダムのペアカップを見た際意志の力で無理矢理人格を出してきたことから本当に海晴を愛してるんだなと伝わってきたのでちゃんと相思相愛で終われたのは見ていてすっきりしましたね。
といった具合にもう少しこうして欲しかった!という箇所はあったにせよ良い部分も沢山あるゲームだったので全体を通して十分良作だったと思います。
¥2,500という価格に関して何度か主張して書いてきましたが、とらのあな限定版も付属している設定資料集が短めながらも丁寧に書かれており、キャラデの担当である塩こうじさんの考えも詳細に載せられていて満足できる内容だったのでこちらも選択肢としては十分ありだと思いました。
こちらの会社が出したゲームに触れたのは今作が初めてだったので今後出していくゲームがあるのであれば是非注目していきたいところです。
ではっ!